自社株信託について、
3分22秒の動画で解説していますので、
まずはこちらをご参照いただくとわかりやすいと思います。
自社株信託を理解するには
まず信託を理解する必要があります。
信託を一言で言うと
「私」の財産を「あなた」に託します。 だから、「あの人」のことを頼みます。 |
ということを実現する契約です。
(遺言でもOK)
信託には下図のように3者登場します。
私 | 委託者 | 財産を託す人 |
あなた | 受託者 |
財産を託される人 財産を管理・運用します |
あの人 | 受益者 |
「私」から見た大事な人(家族など) 受託者が財産を管理・運用し、その利益をもらいます |
信託では、
委託者(私)と受益者(家族)は同一人でもOKです。
自分が高齢になり、財産が管理できなくなったときの備え、
自分や家族のために民事信託を設定することもあるからです。
信託は、中世の十字軍で騎士が遠征するためにできた制度です。
友よ。私は戦争に行く。 私(委託者)の財産を君(受託者)に託すから、 家族(受益者)を頼む。 |
このように、自分がいなくなっても
残された家族が安心して暮らせることを
願って作られた手法でした。
今までは、財産を管理する受託者は
政府から許可を受けた信託銀行でなければ
事実上できませんでした。
しかし、平成18年に法改正がされ、
財産を管理する受託者を商売としてするのでなければ、
信託銀行でない一般の人や法人でもできるようになりました。
このように、受託者を一般の人や法人がする信託を
「民事信託」と言います。
この民事信託の中で、
特に会社の株を後継者に信託することを
「自社株信託」と呼びます。
民事信託(家族信託)をやさしく解説したこちらのサイトも参考になると思います。
『やさしく解説 家族信託・民事信託』
こちらのサイトでは、民事信託(家族信託)を用いた様々な事例を紹介しています。
(子のいない夫婦の相続、障がい者の親亡き後、隠居や家督相続 など)
自社株信託の事例も紹介していますので併せてご参照いただくと
理解が深まると思います。
自社株信託を一言で説明すると?
自社株信託を一言で言うと
私の株を後継者であるオマエに託す。 だから、会社(と私)を頼む |
通常はオーナーと後継者で契約を結びます。
(オーナーの遺言でも設定可能です)
オーナーが委託者 兼 受益者
後継者が受託者です。
信託契約を結ぶことにより、人事権などの議決権は
後継者(受託者)に移ります。
一方で、株の配当を出していてもいなくても、
配当を受ける権利(受益権)をオーナーのままにしておけば、
受益者はオーナーと言うことになり、この場合、贈与税は課税されません。
つまり、生前贈与と同じ効果がありながら、
贈与税が全く課税されないのです。
オーナーが亡くなられると、受益権は後継者に移ります。
(契約で別の人を指定もできます)
そのとき、相続税が課税されます。
ですから、税金が全くかからない分けではありません。
ただ、生前贈与と同じ効果があるのに、
高額になりやすい贈与税はかからず
相続税で処理される点がポイントです。
万一、後継者が不適切と判断される場合、
オーナー一人の意思で、信託契約を解除できます。
この場合、人事権などの議決権も
オーナーの元に戻りますが、
贈与税は課税されず、株の買い取り資金も不要です。
つまり、試しに後継者に株を渡してみて、
ダメなら返してもらうことが可能になります。
このような、融通性の高い制度が今では利用可能になっているのです。
自社株信託のメリット
- 贈与税がかからない(かからないようにできる)
- 後継者に買い取り資金が不要
- オーナー一人の意思で、後で株を返してもらえる
- そのときも贈与税が課税されず、買い取り資金も不要
- 遺言を書かなくても良い
- 2代先、3代先の後継者も指定できる
(これまでの遺言では、不可能だったことです)
自社株信託のデメリット
一方で、自社株信託にもデメリットはあります。
後継者に議決権が行くので、場合によっては後継者が暴走する可能性はあります。
もちろん、重要な経営判断をするとき(新規事業を始める、他社を合併するなど)に
オーナーに拒否権を残せるように設計することはできます。
次に、自社株信託は、重要な契約であるため、
オーナーが認知症など、判断能力が低下してからは
導入することはできません。
しかし、会社の経営は判断能力が低下してからは
できなでしょうから、あまり大きなデメリットとは言えないでしょう。
このように、自社株信託には大きなデメリットはなく
今までの贈与や売買、遺言では実現できなかったことが実現できる
非常に使い勝手が良い制度なのです。